「スキルを極めたいわけじゃない。カッコよくノリたいだけ」大人世代のダンスの本音

踊ってる風シリーズのマンツーマンレッスンを始めて1年が経ちました。
お越しくださる方は40代から80代までと幅広く、みなさんそれぞれの理由や目的でレッスンを受けてくださいますが、ひとつ共通していることがあります。

本気で一からダンスのスキルを磨き上げたいというより、「ちょっとカッコよく音にノレたらいいな」ということ。

近年はダンススタジオも増えて、大人にとっても入口自体は広がっています。ただ構造としては、やはり若い世代を対象とした設計になりやすい傾向があります。入門や初級クラスであっても、振り付けの習得に要求される記憶力と体力のデフォルトは若者仕様。大人世代にとっては少しハードルが高い空間ですし、ビジネスの構造上、どうしてもそこが優先されてしまうのが現状です。誰でも受けられるオープンクラスとはいえ、あのフレッシュで熱気あふれる空間に気後れせず飛び込めるのは、相当タフなメンタルと肉体を持った一部の大人だけでしょう。

正直、それほどのアウェイ感に身を投じてまで、一から基礎訓練を積みたいわけではなく...
あわよくば、手っ取り早くカッコよく踊れるようになりたい、というのが我々大人世代の本音だったりします。例えるなら、一から服の縫い方を覚えて自分で作りたいわけではなく、8割がた仕上げてもらった服に「自分らしさ」をちょい足しして、今すぐ着て出かけたい、という感覚に近いかもしれません。

そう、本質的に大人世代が求めている憧れの正体は、過酷な振り付けの暗記ではなく「音楽に合わせてカッコよくgrooveしている自分」だったりします。それなのに、その手段が一般的なスタジオの門を叩くという選択肢しか用意されておらず、「膨大な振り付け+若者仕様の空気感」という真逆の壁にぶつかり、「私には無理だった…」と自信を砕かれて打ちのめされてしまうわけです。

一から型の習得を強いるのではなく、その人が無理なく一番カッコよく見える形(スタイル)を見つけ出し、仕立てていくこと。これが、マンツーマンレッスンで私が一番大切にしているアプローチです。

このアプローチでレッスンを重ねるうちに、ひとつ思い当たることがありました。
いま提供しているマンツーマンレッスンと、かつて私がエンタメ業界の現場でアーティストに行っていた演出や提案は、アプローチの根本がほぼ同じだということです。レッスンのあり方にどこか既視感やしっくり感があった理由はこれだったんだなと腑に落ちました。

20代から30代の私は、振付師としてミュージックビデオやライブ、CMの現場で、アーティストへの振り付け提供やダンス指導をしていました。ダンス系アーティストにはダンスでしっかり魅せる構成を組みますが、すべてのアーティストがダンスを得意としているわけではありません。ダンス経験が少ない方もいれば、独特の身体のクセがある方もいます。そうした状況の中で、いかにその人がカッコよく見えるか(あるいは、それっぽく見せられるか)をスタイリングするのが私の仕事でもありました。その人の体格や雰囲気、個性の活かし方。バックダンサーの配置で「踊ってる風な見え方」を計算したり、首の角度や手の位置といった所作を仕込むこと。つまり、「引き算と足し算」や「しれっとしたごまかし」のアプローチで、持って生まれた素材をオシャレにカッコよく見せる演出の工夫です。そこで鍛えられたスキルが、いまのマンツーマンレッスンにそのまま活きています。カッコよく見せる必要がある主役たちと、現場で向き合っていた頃の感覚にとてもよく似ています。

大人になってから嗜むダンスは、「踊ってる風」でそれっぽく軽やかに。良い意味での中途半端さや、大人の品を保ちながらスカして踊る余裕。そんな風にダンスを都合よく楽しんだって、誰にもバチは当たりません。

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